経営目線での採用戦略とダイレクトリクルーティング

企業が持続的な成長を実現するうえで、優秀な人材の確保が必要なのは言うまでもない。だが新型コロナウイルスの影響で採用市場は難化し、今や多くの企業が採用活動の行く末に頭を悩ませている。このような状況下で果たして優秀な人材を採用できるのか。そこで今回は経営目線での採用戦略と、採用活動を止めないために今こそ活用すべきダイレクトリクルーティングについて、船井総合研究所・宮内和也氏に解説いただいた。

採用戦略は“量”から“質”へ

 弊社のお客様は中堅・中小企業が多く、そのほとんどは積極的な経営、持続的な成長を目指されています。また労働集約型のビジネスをされているお客様が中心のため、採用に関しては、有効求人倍率が高まっている昨今、「応募が足りない」、「優秀な人材が少ない」、「パート・アルバイトの募集が集まらない」といった“量”の担保を最優先に挙げる経営者様が増えていました。しかし今回の新型コロナウイルスの影響で、採用に対するニーズは大きく変わりつつあります。自粛要請の中、サービス業を中心とした店舗閉鎖が続出、有効求人倍率が下降する中、「より優秀な人材が欲しい」と、“量”の担保から“質”の担保へシフトする企業が続出。加えて、「離職率を加味した採用がしたい」、「リモートワークなどの多様な働き方に対応できる人材を採用したい」、「Web面接で成果を上げたい」、「採用活動をデジタル化したい」といった依頼も増えています。

事業計画を達成するための人事戦略とは?

 経営者様が自社の採用について考える際、忘れてはいけないのが、採用活動のKPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を設定することです。一般的に多くの経営者様はトッププレイヤーとして優秀な実績を残されてきたため、事業計画の策定、事業計画のKPI設定は得意とされています。しかし事業計画を達成するためには、どのような人材をどのくらい採用して、どういう風に配置し、組織を動かしていくのかといった人事戦略が欠かせません。そして人事戦略を実行するためには、マーケティングと同じように数字をしっかり管理しながら進める必要があります。例えば採用募集においては、応募数、面接率、内定率、入社率などを測る。人員計画においては、入社数、退社数、定着率、X年度での生産性などに目を向ける必要があるでしょう。さらに量から質へと移行する中で優秀な人材を獲得するためには、新卒、中途、パート・アルバイト問わず、社内で活躍しているハイパフォーマーの定義づけを行い、成功モデルの汎用化が鍵を握るでしょう。

ダイレクトリクルーティングの活用とそのメリット

この有事において多くの経営者様は採用活動を積極化させるかどうかの決断を迫られています。採用どころではないという業界も少なくないでしょうが、一方で有効求人倍率が下がってきている現状をチャンスと捉えることもできるでしょう。しかし有効求人倍率が下がれば確かに採用はしやすくなりますが、こういう状況下では業界ごとにダイナミックな人の移動が起きることが予想されるため、自分たちで本当に欲しい人材を探し出して、積極的にアプローチしていくことが求められます。そして、その際に有用とされるのが、ダイレクトリクルーティングという採用手法なのです。

 ダイレクトリクルーティングとは、従来のように求人媒体会社や人材紹介会社に頼って採用を行うのではなく、求人検索エンジンなどを活用し、求職者に対してこちらから積極的にアプローチするというもの。その手法は大きく4つに分けることができます。1つ目は、「ファストリクルーティング」。Indeedやcareerjetをはじめとする求人検索エンジンから直接自社の採用サイトに誘導するため、Webマーケティングを行い、採用する方法です。CPC(Cost Per Click)課金型なので、クリックされて初めて広告費が発生、コストを抑えながら応募者数が見込めるなどのメリットがあります。2つ目は、「ダイレクトソーシング」。企業側が求めている人材を直接探し出してアプローチする手法で、ビズリーチなどが主流です。メリットとしては、人材紹介より安価で、接触したい人とのみやりとりができます。3つ目は、「ソーシャルリクルーティング」。ブログやTwitter、Facebook、YouTubeなどのSNSを活用した採用手法で、日本ではWantedlyもその一つです。継続すればするほど効果が期待でき、ミスマッチの軽減や求職者の情報を多角的に知ることができるなどのメリットがあります。そして4つ目は、「リファラルリクルーティング」。これは自社社員が友人や知人を紹介・推薦するという手法で、メリットとしては、コストパフォーマンスが高く、自社の求人情報を見ていない人にもアプローチが可能。また既存社員の紹介なので高確率で風土や文化との親和性が期待できます。

採用市場が難化する中、いかに新規母集団を確保するか

 新型コロナウイルスの感染拡大は、採用環境にも多大な影響をもたらしています。特に合同説明会の中止によって新卒採用市場は難化。弊社にも、「どのようにして母集団を形成したらいいのか?」、「採用のプロセスをデジタル化できないか?」、「採用スケジュールはどうなってしまうのか?」といった相談が相次いでいます。そこで私たちは、採用活動を止めないために以下の3点を提案。それがダイレクトリクルーティングの活用による新規母集団の確保と、オンライン説明会とWeb面接による採用オンライン化の早期導入、そしてリクルーターの導入によるフォロー期間長期化への対応です。特に合同説明会ができない状況下でも新規母集団を確保できるダイレクトリクルーティングの活用は、企業にとって優秀な人材と接点を持つための効果的な手立てとなるでしょう。

 では、具体的にどのようなスカウト媒体を選べばいいのか。弊社では、新卒採用向けのダイレクトリクルーティングとして最も実績があり、地方・都市部共通で使えるなど汎用性の高いOffer boxをお勧めしています。実際、ピンポイントで3~4人採用したいという企業様には、Offer boxを活用したコンサルティングを数多く実施してきました。成功事例も数多くあり、例えばある企業様の場合、従来の採用活動ではどんなに頑張っても年間に10名程度しか採用できなかったのが、社長がOffer boxを使って一本釣りに挑んだところ、優秀な人材が立て続けに3名も採用でき、しかもコストや工数も大幅に削減できました。結果的に20名の優秀な人財が採用でき喜んで頂けました。スカウトメールの内容や選考企画の立案など細かい打ち手を実践した結果でした。

紹介・媒体会社から自社採用に切り替えるという考え方が広く定着してきた昨今、ダイレクトリクルーティングも導入企業が増えてきたため、単に活用すれば成果が出るという時代ではなくなってきました。どのような媒体を使って、どのように運用するかで、結果に差が出始めています。コロナ禍の影響もあり、WEB面接や録画面接を利用していくことで採用工数の削減も大きな課題となります。さらに今後はオウンドメディアも活用して、いかに自社が透明性のある会社であるかということを、新卒、中途、パート・アルバイトに対して、全て同じ方向で継続的に発信することが求められるでしょう。


・船井総合研究所
https://hrd.funaisoken.co.jp/

・人財ファースト経営フォーラム
https://www.funaisoken.co.jp/study/036442

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株式会社船井総合研究所 HR支援本部 HRD支援部 部長 宮内和也氏

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