女性管理職登用、1割に満たない理由とは。「女性管理職30%」の目標を達成している企業は8.9%。

株式会社帝国データバンクは2021年8月16日、「女性登用に対する企業の意識調査」の結果を発表した。調査期間は2021年7月15日~31日で、全国の企業1万992社から回答を得た。なお、同社は「女性登用に関する調査」を2013年以降毎年実施しており、今回で9回目となる。この調査により、女性管理職の平均割合や登用状況などが明らかとなった。

「管理職(課長相当職以上)」に占める女性の割合は?

女性の活躍推進を主な目的として、2021年6月に「男性の育児休業促進策」を盛り込んだ「育児・介護休業法」が改正された。一方で、政府が2020年までの目標として掲げていた「指導的地位に占める女性の割合30%」は未達成となるなど、女性活躍社会の実現に対して厳しさが続いているが、現状はどうなのだろうか。

はじめに「自社における従業員(管理職・役員を含む)に占める女性の割合」を尋ねた。すると、女性従業員割合は前年比0.7ポイント増の平均26.5%となった。「30%以上」と回答した企業は33%となり、この結果を比較可能な2014年以降で最も高かった。また、女性従業員割合が10%に満たない企業(「10%未満」と「全員男性」の合計)は27.3%で、前年から1ポイント減少した。

さらに、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は平均8.9%となり、過去最高を更新。前年比では1.1ポイント増で、伸び幅もこれまでの統計上最も大きかった。また政府が目標として掲げている「女性管理職30%」を上回っている企業は8.6%で、1割未満にとどまるものの過去最高となった。自社の役員(社長を含む)に占める女性の割合は平均11.8%と、前年より1ポイント増加した。



規模・業界・従業員数別の内訳から課題が浮き彫りに

続いて、「女性管理職の割合」を規模・従業員・業界別にまとめた。すると、「規模別」では「小規模企業」が平均11.9%で最も高く、規模が小さい企業ほど女性管理職の割合は高い結果となった。

「業界別」では「小売」の15.5%がトップで、「不動産」が15.3%と続き、いずれも前年より3ポイント近く増加した。一方で、「製造」が6.9%、「建設」が6.1%、「運輸・倉庫」が5.7%となり、全体平均(8.9%)を下回った。これらの業界からは、「求人しても女性からの応募が少ない」など、採用から苦心しているという声が挙がった。

「従業員数別」では、「301人以上」で前年比0.3ポイント増の6.5%、「101人以上」で前年比0.1ポイント増の5.8%に。2022年4月に「女性活躍推進法」の改正が施行されると、女性活躍に関する情報公開の対象が「従業員数301人以上」から「101人以上の企業」に拡大する予定だ。今後新たに情報公開の対象となる企業において、どのような変化が表れるかが注目される。



回答者の2割以上は「今後女性の管理職割合が増加する」と見込んでいる

次に、「自社における女性管理職割合は5年前と比較してどのように変わったか」について尋ねた。すると、「増加した」は20.7%となった一方、「変わらない」とする企業は70.4%で7割を上回った。

また、「現在と比較して今後どのように変わると考えているか」を尋ねた。すると、「女性管理職」の割合が「増加する」と考えている企業は前年比0.9ポイント増の22.6%で、前年までは減少傾向だったが増加に転じた。「変わらない」は同1.4ポイント減の58.9%だった。

「女性役員」については、5年前と比較して「増加した」企業は8.7%と前年と横ばいだったが、今後「増加する」と考えている企業は前年比1ポイント増の7.9%に。いずれにおいても、「変わらない」が7割以上を占める結果となった。



「女性登用を進めている」という企業は4割以上で前年を上回る

また、「自社において女性登用を進めているか」を尋ねた。すると、「女性登用を進めている」企業は46.9%で、過去最高だった2019年の50%には達しなかったものの、大きく減少した2020年の42.6%よりも4.3ポイント増加した。女性登用を進めている企業の内訳を見ると、「社内人材の登用を進めている」は40.7%(前年比3ポイント増)、「社外からの登用を進めている」は11.5%(同1.3ポイント増)となり、それぞれ増加している。他方、約4割の企業では女性登用を「進めていない」という結果も明らかとなった。



約半数が「男性の育児休暇取得推進」に前向きに考えている

最後に、「自社における男性の育休取得に関する推進状況」を尋ねた。すると、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。また、「利用実績が少ないが、今後取得を推進していく」、または「取得しやすいよう社内規定などを整備する」とする、「今後推進する」企業は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得推進を前向きに考えていることがわかった。一方で、「特に何もしない」と回答した企業は39.5%となった。

2021年6月には、「出産や育児などによる労働者の離職防止」や「仕事と育児の両立」を目的とした「改正育児・介護休業法」が施行された。さらに、2022年4月からは「男性の柔軟な育休取得の推進」に向けた枠組みが創設される予定となっているため、今後の動向が注目される。




管理職や役員への女性登用は、企業価値向上における重要な要素になりつつある。将来を見据えて、現段階からリーダーシップ教育や職業訓練などを通じた人材育成に取り組む必要があるだろう。


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