組織のイノベーションをサポートする 人財ファースト経営フォーラム 【第1講座】 加速度的成長を推進する人財育成環境(新入社員編)
【はじめに】
本日は主に、標準化組織から多様性組織に移行するにあたっての人財育成環境についてお話させていただきたい思います。標準化組織は、ある特定の特性を持った人たちで構成された組織であるケースが非常に多く、規模の拡大や事業の拡大に伴い、これまで接してきたタイプや我々がマネジメントしてきたタイプとは違う人財を戦力化していかなければなりません。その際に最初に考えなければいけないのが、多様性なのですが、今回はその中でも新卒の受け入れというところに絞ってお話させていただければと思います。私自身、今年で40歳を迎えますが、同じ部署に新卒の社員が入って来ると、やはり価値観や感性の部分でギャップを感じますが、こうした違いを認識し認めることで、若い世代に対応することができると思います。
令和型人財の意識や価値観
では令和世代の若い人たちはどういう志向を持って、今後社会に出てくるのでしょうか。さまざまな調査データをもとに、令和世代の意識や価値観をまとめてみました。まず入社時に期待していることとしては、「仕事が面白そう」かどうかを最も重視しているようです。よって皆様が受け入れる際には、インターンシップなどを通じて、どれだけ自社の仕事の面白さを伝えられるかが重要でしょう。続いて、学生の転職・起業意識に関して、「転職・起業の可能性を想定しているか」を聞いたところ、文系では6割(58%)、理系では7割(71%)が想定していると回答しました。特に理系の専門的な職種の人材は、転職によりキャリアアップを図る傾向が高まる中、転職を当たり前のことと考えている傾向が伺えます。今後、人材の流動性の高まる傾向は続いていくでしょう。次に新人の退職理由に関しては、1位が「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」(23%)、2位が「労働時間・環境が不満だった」(14%)、3位が「同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」(13%)となっており、退職理由の一番の要素が“人”であることが伺えます。私自身、日々クライアントのもとでさまざまなお話をお伺いするのですが、退職者の理由としては、やはり上司や経営者に対する失望感が多い印象です。
令和型人財が求める働き方
続いては、令和型人財が求める働き方について見ていきましょう。まずは「令和がどのような時代になってほしいか」という質問に対して、最も多かったのは「多様な価値観」という答えでした。特に女性を中心に、あらゆる価値観を受容する職場・上司が好まれる傾向にあると言えるでしょう。今後は女性や外国人など分け隔てなく、多様性のある受け入れ体制を築く必要があると思います。次に、「どのような職場環境を求めているのか」を聞いたところ、1位が「お互いに助け合う」、3位が「お互いに個性を尊重する」となっており、昨今の若い人たちは“個性を尊重”した上での“助け合い”を求めているようです。受け入れる際は、助け合う風土やカルチャーがあるかどうかがポイントになるでしょう。
続いて、働く目的について質問したところ、「経済的に豊かになりたい」と「楽しい生活がしたい」という声が上位につけました。さらに「若いうちは進んで苦労すべきか?」という問いに対しては、「好んで苦労することはない」という答えは年々増えており、昨今では「苦労を買って出る」という価値観は古い、と認識されつつあります。続いて、「どんな能力を身につけたいか?」という問いに対しては、「コミュニケーション力」が最も多く、次いで「専門知識」、「プレゼンテーション力」、「論理的思考」となりました。昨今の傾向としては、「リーダーシップ」や「交渉力」より、「プレゼン」や「論理的思考」に意識が向いていることが伺えます。
平成前期型組織と令和型組織の違い
以上の話をまとめますと、平成前期型組織と令和型組織の違いは次のようになります。まずミッション・ビジョンの捉え方としては、平成は「経営者が実現するもの」であるのに対しては、令和は「社員全体で実現するもの」。ベクトルに関しては、平成は「ばらばら」なのに対して、令和は「同根異才」。組織の考え方としては、平成が「人に仕事をつける」のに対し、令和は「仕事に人をつける」。伸びる人財に関しては、平成が「仕事好き」なのに対して、令和は「仲間好き、会社好き、プラス仕事好き」。評価制度に関しては、平成が「インセンティブ高報酬型」なのに対して、令和は「継続的増伸報酬型&多面的評価法」。昇進基準に関しては、平成が「経験重視」なのに対して、令和は「マネジメント力重視&ミッション共感力重視」。そしてキャリアプランに関しては、平成が「不透明」だったのに対して、令和は「明確化」されたものが求められるでしょう。
令和型人財の育成スタンス
令和型人財の育成においては、ポイントが5つあります。まず1つ目は、「多様性に寛容な上司へと変化し、完全個別対応で考えること」。一人ひとり育ってきた環境は違い、形成される人格も十人十色です。意思決定(やる気)のスイッチも人それぞれですので、個人個人に合った育成の手法、伝え方を考える必要があるでしょう。続いて2つ目は、「短期的な目線のみではなく、長期目線で育成に取り組むこと」。相手の長所(個性)を発見して、ムリを強要せずにのびのびと成長させる意識が求められます。効率化、スピード化だけでは優秀な人財は育ちません。まず、目指すべきは“パーツスペシャリスト”の育成です。続いて3つ目は、「定着化を最優先に取り組むこと」。人財育成の基本ステップは、「定着化」⇒「成長化」⇒「戦力化」です。成長、戦力化しても、続かなければ意味がありません。続いて4つ目は、「自分一人で育成しない。複数名体制で育成、仕組化すること」。部下の指導・進退の悩みを一人で背負ったり、ブラックボックス化してはいけません。日頃から部下の育成について相談をしたり、複数名で向き合うことが大切です。またマンパワーで何でも解決しようとしないこと。マニュアル化を始めとした仕組化も並行して考える必要があります。そして5つ目のポイントは、「目指すべきは“仲間好き、会社好き、仕事好き”な人財」。「仕事好き」よりも「仲間好き」を優先しましょう。これはさきほどの定着化を最優先に取り組みましょうという話と連動しているのですが、定着するためには、まずは横の繋がりを作る必要があります。例えば内定者研修には、社会人としてのマナーや会社の理念を伝える目的もありますが、まず第一に取り組むべきは、横の繋がり、仲間づくりです。なかには「この同期がいたから入社を決めました」といった最終的な承諾理由にもなっています。「このメンバーと一緒に働いていきたい!」と思わせるような横の繋がりを作っていくことが重要です。
「仲間好き・会社好き・仕事好き」人財を育てるには?
~仲間好き社員を育てる~
まずは仲間好き社員を育成する基本について3つのポイントをお話いたします。1つ目は、横の繋がりを作ることです(インフォーマルネットワークの構築)。インフォーマルネットワークとは自分で自分自身のセーフティネットを作ることで、例えば内定者と仲良くなる、アルバイトで配置部署以外の先輩と仲良くなるなどが挙げられます。ネットワークの構築に向け、コミュニケーションの場の提供を積極的に行うことが必要でしょう。続いて2つ目は、相性を考えたマネジメントを行うことです。例えば、相性を考えた配置や、相性の合う先輩社員によるメンタリングなどが挙げられます。船井総研では採用の段階から取り組んでおりまして、例えばリクルーター制度で学生とマッチングをする際は『ミツカリ』という適性診断ツールを活用して、より志向が似ているメンバーを学生につけています。そして3つ目は、アサーティブネスを身につけさせることです。アサーティブネスとは、上手に主張をし、周囲を動かすことのできるコミュニケーション力のこと。例えば、上司からすると、新人のプライベートに踏み込むのは躊躇してしまいます。しかしそうなると、理解不足によって上手に育てられないケースも出てくるでしょう。そういうときに、若い新人が自ら自分の家族や恋人の話などをしてくれれば、マネジメントする側にとっては、とても楽です。そういう意味でも、新人の段階から自己開示する力をつけさせましょう。
では具体的にどのような施策があるのか、事例をご紹介したいと思います。まず、一番簡単にできるのは、日報です。社員の状況を知るバロメーターにもなるので、日報制度で声をかけ合う風土づくりをしてみましょう。実際に取り組んでいる会社の中には、例えば手書きの日報に上司が赤字で返事を書いて、交換日記のようにしたり、また日報のアプリを活用するケースも見られます。続いての事例は、シスターブラザー制度やメンター制度です。一例として、DiSCのタイプでマッチングさせる会社もあります。ポイントは、同じ部署以外の先輩と後輩がペアになることで、社内に相談できる存在を増やしたり、相性を考慮したペアにすることで、サポートしやすくすることなどが挙げられます。
「仲間好き・会社好き・仕事好き」人財を育てるには?
~会社好き社員を育てる~
次に会社好き社員を育成する基本について3つのポイントをお話いたします。まず1つ目は、理念の浸透を行うこと。朝礼などで唱和して、社員全員が言える状態になっている会社さんも多いかと思いますが、それをきちんと体現できていなければ意味がありません。どういう行動や考え方が自社の理念に適しているのかを理解して、きちんとアクションにまで落とし込んでいく必要があります。続いて2つ目は、待遇改善を図ること。どれだけ人間関係が良くても、働く環境が悪ければ永く務めることは不可能です。労働時間、休日日数、残業時間の見直し、長期的なキャリアプランの作成などを行って、業務の効率化と生産性の向上を目指しましょう。そして3つ目は、家庭も巻き込んだ育成、サポートです。特に実家から通勤している社員は、帰りが遅くなったりすると、家族(特に両親)が心配するケースがあります。そうならないためにも、入社前に保護者向けの会社説明会を実施したり、保護者向けの会社案内を配るなどして、保護者の会社への理解、働き方への理解、将来への理解へと繋げていきましょう。
では具体的にどのような施策があるのか、事例をご紹介したいと思います。まず1つ目は、将来の幹部候補の育成を目的とした「フレッシャーズキャンプ」です。マナー研修やスキルアップ研修ももちろん大事ですが、それとは別に、入社間もない段階で、経営者や幹部の目線になって考える習慣を植え付ける必要があります。それによって全員とは言いませんが、加速度的に成長する人財が何パーセントか出てくるでしょう。新入社員だからといってレベルを下げるのではなく、幹部育成を前提にしたカリキュラムをしっかり作ることが大切です。続いて2つ目の事例は、社長と幹部が夢を語り、会社の未来を考える、そんな「社長・幹部合宿」に、新入社員を参加させるという施策です。経営者や幹部が何を考えているのかを聞き、方向性の共有を行います。これもさきほどと同様、新入社員が若手同士で合宿をするのももちろん大事なのですが、もう一つ上の視点に触れさせることも重要です。
「仲間好き・会社好き・仕事好き」人財を育てるには?
~仕事好き社員を育てる~
では最後に、仕事好き社員を育成する基本について3つのポイントをお話いたします。まず1つ目は、成果を上げる方程式(成果・結果=考え方×スキル×意欲)。なかでも特に重要なのが、考え方です。スキルがマイナスになることはありませんが、考え方はプラスにもマイナスにもなり、もしマイナスになると、時として会社に損失を生んでしまいます。よって新入社員には考え方の重要性をきちんと伝えましょう。その際にポイントとなるのは、「ティーチング」と「コーチング」がセットになっていること。また成果を早期に出す若手の一番の特徴は「素直さ」ですので、まずは会社の考え方を素直に受けれてみようというところをしっかりと伝える必要があります。続いて2つ目は、意味づけ力です。この仕事は何のためにするのか、この仕事はどこに繋がっているのかを伝える必要があります。納得しないと動かない背景には正解が見えないことへの不安があるため、まずはきちんとゴールを提示してあげましょう。そして3つ目は、良い習慣を身につけさせることです。仕事で成果を出すためには、良い習慣を身につけさせることが欠かせません。特に重要な習慣としては、メモを取る、5S、読書(月に1冊以上)などが挙げられます。
ではこちらも、どのような施策があるのか事例をご紹介します。まずは分業化のための業務チェックリスト・スキルマップです。新人教育は教習所と似ており、「何ができた」「何ができなかった」などを見える化、もしくは点数化することで、新人は自走していきます。ぜひ、このチェックリストを社員が見える位置に貼っておき、自分と周囲のレベルも比較できるようにしましょう。そしてもう一つ重要な事例が、社内テスト・コンテストです。学生時代はテスト前になると勉強しますよね。つまりテスト前には勉強のための自主性が働くのです。これは会社に入っても同じこと。テストを設けることで、新入社員はテストに向けて頑張って自主練をします。そしてテストの結果やコンテストの順位付けは基本的に公開することが重要です。
【総括】
ぜひ4月までに新入社員を受け入れる体制を整えてください。まずは「育つ制度設定」ということで、メンターや1on1などの制度を用意することが大事です。その次に「育てるツール整備」ということで、チェックリストや理想とする社員のロープレ動画などを整備しましょう。そして最後に大事なのが「育てる人づくり」。本日皆様には、令和人財の意識や育て方について学んでいただきましたが、皆様の会社の管理職の方々はそれを理解しているのか。あるいは現場で直接新人たちと業務を行う2~3年目の社員や4~5年目の社員がこのようなことを理解しているのか…というと、おそらくまだまだ不足しているのではないでしょうか。制度やツールの整備ももちろん大事なことですが、何よりも育てるための人づくりが重要なのです。ぜひ本日のテキストなどを使っていただき、新入社員が入社する前に、受け入れる側の研修などもしっかり準備をしてください。私の話は以上になります。ご静聴ありがとうございました。
・船井総合研究所
https://hrd.funaisoken.co.jp/
・人財ファースト経営フォーラム
https://www.funaisoken.co.jp/study/036442
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