Jリーグ・ガンバ大阪のプレーヤーから東証マザーズ上場企業の経営者へ。他に類を見ないキャリアを重ねてきた嵜本晋輔氏は、選手時代に戦力外通告を受けた経験を通じて「前向きな撤退」という発想にたどり着き、ビジネスの世界で確かな成果を上げてきた。ここでは「前向きな撤退と挑戦力」をテーマに、天才経営者と讃えられる氏のビジネス論を聞く。

嵜本晋輔
株式会社SOU　代表取締役社長
1982年、大阪府出身。関西大学第一高校卒業後、Jリーグ「ガンバ大阪」への入団と同時に関西大学に進学。引退後、父が経営していたリサイクルショップで経営のノウハウを学び、2007年にはブランド買取専門店「なんぼや」を関西にてオープン。2011年 株式会社SOUを設立し、同社代表取締役に就任。現在は「なんぼや」の他、予約もできる買取専門店「BRAND CONCIER（ブランド コンシェル）」、BtoBオークション事業「STAR BUYERS AUCTION（スターバイヤーズオークション）」、BtoC販売事業、「ALLU（アリュー）」、「usus（ウズウズ）」、さらに資産管理アプリ「miney（マイニー）」を展開・運営し事業を拡げ、2018年3月、東証マザーズへの株式上場を達成、さらなる事業規模拡大と成長を目指している。

設立7年で上場、年商300億円企業に成長

――今回は「前向きな撤退と挑戦力」というテーマで、嵜本さんの著書『戦力外Jリーガー 経営で勝ちにいく 新たな未来を切り拓く「前向きな撤退」の力』の内容をベースに様々なお話をうかがいたいと思います。まず、会社設立から7年で東証マザーズ上場を実現し、現在は年商300億円企業に成長させたご自身の経営手腕についてはどのような評価をされていますか？

嵜本晋輔氏（以下、嵜本）　とにかく新しいことにどんどんチャレンジして、可能性があると思ったものにはひたすら改善を加えていく。それを繰り返してきただけです。私は自分に特別な商才があるとは思っていませんし、自己評価はかなり低い方だと思います。「7年で東証マザーズ上場、年商300億円企業」という点を評価していただくことが多いのですが、もしも改善点がもっと少なく、次々に良い結果を出せていたら、より早く上場を実現し、年商も300億円を超えていたはずです。それぐらいリユースの業界には可能性があると思っています。

――著書によると、お父様が経営されていたリサイクルショップで“経営のノウハウ”を学ばれたということですが、そこから2007年にブランド品の買取専門店「なんぼや」を開店するに至るまでの経緯を教えてください。

嵜本　実を言うと、父から経営について具体的な教育を受けたことはありません。その背中を見て学んだというのが正しいと思います。父は私が小学生の頃から、飲食業や不動産業など様々な事業を立ち上げては何らかの理由で辞めることを繰り返していて、リサイクルショップは父が40歳の時に始めた商売でした。店が終わって一家団欒の時間を過ごしていても、出張買取の電話が鳴れば何時でも対応する。そんな父をかっこいいと思いましたし、その姿から「お客様との出会いを大切にする」という、現在のSOUでも大切にしている価値観を学びました。>

リサイクルショップは、電化製品や家具、オフィス用品を一般家庭や企業から引き取って再販する仕事です。兄と2人で冷蔵庫を買取りに出向き、3,000円で引き取って10000円ほどで販売します。しかしこれでは、商売的に非効率です。例えば商材がブランド品のバッグであれば、片手で持って帰ってくることができ、かつ単価も高い。それに気づき、2人の兄とともに父の店から独立し、2004年にMKSコーポレーションを設立。大阪・難波に「なんぼや」の前身にあたる「ナンバdeなんぼ屋」をオープンしました。