少子高齢化で労働力人口が減少の一途を辿り、人手不足が深刻化する中、政府が掲げる「一億総活躍社会」を実現すべく、各方面で様々な取り組みが行われている。「女性の活躍推進」もそのひとつで、女性が企業で働く環境の改善とともに、最近は女性の起業を支援する動きも見られるようになっている。

実際に起業する女性は年々増えており、株式会社東京商工リサーチが2017年に行った「第7回 全国女性社長調査」では、全国の女性社長が本調査開始以来最多の37万1,232人になった。しかし、企業数と女性社長数を対比した「女性社長率」を見ると、前年と比べて上昇してはいるものの、数字的には12.5%と決して高いものではなく、まだまだ日本社会に女性社長は少ないのが現状である。

女性が男性に比べて起業しにくい背景には、女性起業家のロールモデルが少ないことや、スタートやステップアップに必要な経営知識、スキルの乏しさがあるのではないかと考えられる。また、女性経営者ならではの悩みを汲み取って相談に乗ってくれる相手もなかなかいないようである。

こうした状況の中、女性起業家支援にいち早く乗り出しているのが東京都である。東京都は、「女性ベンチャー成長促進事業」として、「APT Women（アプト ウィメン：Acceleration Program in Tokyo for Women）」という短期集中プログラムの提供をスタート。2018年夏には第3期の募集がなされた。

3ヵ月の国内プログラムでは、成長志向のある女性起業家を対象に、スケールアップに必要な経営知識・スキル・ネットワークを獲得できる内容が提供される。また、海外展開を見据えた内容の講義やワークショップを受けることも可能だ。プログラム受講者の意向、起業ステージ、事業内容等を考慮しながら様々なニーズに対応するほか、受講生を多面的に評価し、国内発展型又は海外進出型に選抜することで、受講者の現状に見合った支援が行われる。

海外進出型に選抜されたメンバーは、女性ベンチャー支援が盛んな海外都市や約10日間派遣され、現地での全員参加型プログラムのほか、派遣者一人ひとりのニーズにあわせた個別支援で、海外進出の足がかりを掴むことを目的とした場が提供される。
プログラム終了後は、後に続く女性起業家にとってのロールモデルとなることが期待されている。

自治体による女性起業家支援は、東京都以外でも行われつつある。

山口県では、地方創生推進交付金で行う「創業するなら山口県推進事業」のひとつとして、県と民間の金融機関や企業が共同で「女性創業応援やまぐち株式会社（WISやまぐち）」を設立。女性の起業を支援している。

また、経済産業省も「女性起業家支援ネットワーク構築事業」として、地域の金融機関や産業・創業支援機関等を中心とした女性起業家支援ネットワークを全国10ヶ所に形成。事業の中心には、起業のいろはや各地域でどういった相談機関があるかを知ることができるポータルサイト「わたしの起業応援net」を据えている。このサイトを使えば、利用者は起業に関するあらゆるセミナーを地域ごとに検索することが可能になっている。

当事業では、女性起業支援モデルの創出や他地域への横展開を目的に、「女性起業家等支援ネットワーク」に属する支援機関が行った女性起業支援のうち優良事例を表彰する「女性起業家支援コンテスト（ジョキコン）」の開催も手掛けている。連携性や伴走性、広域性、地域性の4つのポイントをもとに審査された結果、平成30年1月に開催された第一回では、全国66件の応募の中、「さっぽろ青少年女性活動協会」と「ワタシプラス」が最優秀賞を受賞した。

このように、国や地域をあげて広がる女性起業家に対する支援や取り組み。女性経営者の活躍を推進し、経済への貢献に繋がるか、今後の動向が注目される。