副業・兼業推進の鍵は、イメージの再形成と地方進出にあり
まずは副業・兼業に対するイメージを変えるべき
副業・兼業を推進する動きが広がっている昨今、実際に現場で働く管理職の人たちはどのような意識を持っているのだろうか。株式会社日本人材機構が首都圏の管理職を対象に行った就業意識調査によると、「所属企業で副業・兼業が許された場合、副業・兼業に取り組めるか」という質問に対して、52%が可能だと回答している。一方で、「平日の労働時間が2時間減ると仮定した場合、その時間をどう使うか」という質問に対しては、「副業・兼業」と答えた割合がわずか6%にとどまった。同様に、「自由に使える休日が増えた場合、何に取り組むか」という質問に対しても、「副業・兼業」と回答した割合が5%と少ない。この調査結果から、副業・兼業が物理的に可能であったとしても、副業・兼業に積極的な姿勢を持つ人材は少ない、という現状が明らかになった。
「『副業・兼業』という言葉から思い浮かぶものは何か」という問いに対しては、「アルバイト系(飲食、接遇、運送、警備、清掃、軽作業など)」「ネットビジネス(物品などの販売・取引)」「オンライン系(モニター、アフィリエイトなど)」などの回答が上位を占めた。この結果からは、副業・兼業が、スキルアップやキャリアアップとは無関係の「小遣い稼ぎ」のように捉えられている傾向が強いことがわかる。つまりこうしたイメージが、副業・兼業に対する消極的な理由へと繋がっているのだろう。
一方で、「月に1~2度、休日を使い、自分の力を発揮して地方企業の業務支援をする機会がある場合、やってみたいと思うか」という質問に対しては、「思う」と回答した割合が60%となった。また「複数の地方企業で働く副業・兼業のスタイルが浸透し、さらに現在の収入と変わらないとした場合、地方での働き方に興味はあるか」という質問に対しても、「興味がある」「やや興味がある」と回答した割合が46%と半数近くにのぼった。現在政府は「働き方改革実行計画」において、副業・兼業を推進しているが、まずは副業・兼業に対するイメージの再形成こそが、推進のカギになると言えるだろう。
地方で活発化する副業・兼業推進事例
近年、特に地方において副業・兼業を推進する動きが活発化。副業・兼業は、少子高齢化とそれに伴う労働力不足が深刻化する中で、企業や自治体が優秀な人材を獲得するための活路になると期待されている。例えば、広島県福山市では、国内の自治体初の試みとして、2017年11月~12月の期間に、兼業・副業限定で戦略顧問を募集した。
この取り組みの狙いは二つある。一つは、福山市自体の組織改革だ。自治体を取り巻く環境が厳しさを増す中、福山市では新しい視点で戦略的に事業を創造し、成長を促進できる民間のビジネスプロフェッショナルの獲得を目指している。しかし、首都圏において現役で働く優秀な人材を市職員としてスピーディに獲得するためには、副業・兼業限定という形がベストだった。さらに、もう一つの狙いは、福山市の企業における、副業・兼業人材活用の促進である。同募集の応募者数は395人に上り、その大半が首都圏在住者であるが、このように自治体がモデルケースとなることで、福山市の企業に新しい潮流が生まれることが期待されている。
副業・兼業希望者と、人材を求める地方企業をつなぐマッチングビジネスも登場してきている。人材紹介事業を行う株式会社groovesは、2017年12月、副業によって地方を活性化させることを目的としたWEBサイト「SkillShift」をオープン。都市部の企業で正社員として働きながら副業を希望している人材と、人材不足の問題を抱える地方企業をマッチングさせるというものだ。すでに複数の企業が、経営企画やマーケティング、人事といった職種で募集を行っている。
副業・兼業がもたらすメリットとは?
副業・兼業には、「人材」と「人材が本業として所属する組織」と「副業の受け入れ先となる組織」の、三者にとって大きなメリットがある。まず「人材」にとっては、一社だけでは得られないさまざまな経験を通じて、キャリアアップが図れること。次に「人材が本業として所属する組織」にとっては、新規ビジネス創出のきっかけとすることが可能となる。また副業受け入れ先が地方企業の場合は、地方進出の足掛かりにすることもできるだろう。そして「副業の受け入れ先となる組織」にとっては、優秀な人材を獲得できるとともに、新たな視点を取り入れることで、従業員の意識改革・スキルアップにも繋げられる。特に地方企業においては、深刻化する人材不足に対応しながら、地方にはない都市部ならではのアイディア等を取り入れることができるだろう。
もちろんこうした副業・兼業推進の動きは、地方企業のみならず、都市部の企業にとっても、事業成長とイノベーションを生み出す大きなチャンスとなる。企業の経営者層や人事は、人材の流動化・働き方の多様化によって享受できるメリットをしっかり認識し、副業・兼業を推し進めていくべきだろう。
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