中小企業における働き方改革の実態とは――? 業績好調な中小企業の社員ほど「働き方改革が会社に好影響」と回答。

働き方改革に積極的な企業=業績好調な企業

働き方改革の波は規模や業種を問わず押し寄せている。厚生労働省が2017年の夏から秋にかけて、関係者や有識者を集めて行った「中小企業・小規模事業者の働き方改革・人手不足対応に関する検討会」では、大企業では改革が進んでいる一方で、中小企業では思ったように進んでいないという認識が共有された。2018年に入り、その進度に変化はあったのだろうか?

今年5月、ワークスモバイルジャパン株式会社が全国20~59歳の中小企業で働く正社員(中小企業基本法の定義に基づき抽出)の男性778名、女性258名を対象に行った「中小企業の業績別働き方改革意識・実態調査」(勤務先企業が、業績好調企業か、業績不調企業であるかについては、モニターの評価から抽出して判別)を実施した。これによると、勤務先企業が働き方改革、またはそれに類する取り組みをしているかを問う設問では、36.0%の中小企業が、すでに働き方改革、またはそれに類する取り組みをしているとわかった。同社が昨年10月に実施した同様の調査では、39.5%であったことから、中小企業の働き方改革実施率は、ほぼ横ばいといえる。

さらにこの回答を「業績が好調な企業」と「業績が不調な企業」とに分けると、業績好調な中小企業では40.9%の実施率に、業績不調な中小企業では31.1%の実施率になり、業績が好調な企業ほど、働き方改革に積極的に取り組む傾向が見られた。

では、働き方改革は会社にどのような影響をもたらしているのだろうか。「良い影響を感じている」と答えたのは、好調企業が38.7%、不調企業が19.9%と、業績不調な中小企業ほど、改革によい印象を持っていないことがわかる。

働き方改革が「会社の業績に良い影響を与えていると感じる」と回答した中小企業では、どのような取り組みがよい影響につながっているのだろうか。同調査によると、例えばITツールの導入に効果を感じていると答えた企業は、好調企業で28.0%だったのに対し、不調企業では6.3%と、21.7%もの差が開いた。

好調企業、不調企業が、ともに効果を実感している取り組みは、「ITツールの導入(21.7%)」がトップで、以下、「雇用促進施策(13.7%)」、「社員のスキルアップ奨励(12.2%)、「多様な勤務時間の導入(6.0%)」と続く。そうした中、注目すべきは、最下位の「時間外労働の上限設定」だ。この項目に関してのみ、不調企業が「効果を実感している」と答えた割合が、好調企業が答えた割合を上回った。中小企業においては、時間外労働を取り巻く環境に、特別な事情があるように見受けられる。

企業規模によって「残業理由」に違いがある

では、中小企業が「時間外労働の上限設定」に取り組む場合、どのような点に留意すべきなのだろうか。東京商工リサーチが2017年2月に実施した「長時間労働」に関するアンケート調査を参考に見てみよう(資本金1億円以上を大企業、1億円未満を中小企業等と定義し、1万2,519社から回答を取得)。

残業の有無に関する質問に対して、「恒常的にある」が57.3%、「時々ある」が36.4%となった。つまり、「残業がある」のは、全体の9割以上を占めている。一方、「ない」と「させない」は6.1%(にとどまっている。

残業の理由については、「取引先への納期や発注量に対応するため」が、37.6%と最多となり、仕事量に対して人手が不足している」が24.7%、「仕事量に対して時間が不足している」が21.1%で続いた。

中小企業等においては、「取引先への納期や発注量に対応するため」(40.6%)が最も多い理由となっており、以降「仕事量に対して人手が不足している」(22.9%)、「仕事量に対して時間が不足している」(19.8%)となっている。中小企業等は、取引先との関係による理由が大企業を11.8ポイント上回っていることなどから、納期(工期)を守り、受注先との取引関係を維持するために残業が増えてしまっている、という構造的な課題が存在するということだろう。

「残業時間を減らす努力をしていますか」という問いに対しては、「はい」が79.7%と約8割を占め、「いいえ」は12.4%と約1割に過ぎなかった。企業規模別では、大企業では「いいえ」が7.1%、中小企業等では「いいえ」が14.0%と、2倍近い差が見られる。中小企業等が「いいえ」と回答した理由は以下の通りだ。

 「必要な残業しかしていない」(52.1%) 「したくても、取引先との関係からできない」(19.3%)その他、「従業員を増員する体力がない」(建材販売業)「管理者側の問題意識欠如」(金融保証業)「不必要な会議に時間がとられ作業が遅延」(ソフトウェア業)「経営方針として抜本的な改善策がない」(経営コンサルタント)「天候などの不可抗力のため」(建設業)

上記の理由を見てみると、個々の企業努力だけでは解決しないものや、根強い人手不足に起因するものなどが目立つ。しかし前述のように、こうした中小企業等でも78.6%が残業減少に務めてはいるのだ。

限界を抱える中小企業に実のあるサポートを

再びワークスモバイルジャパン株式会社の調査に戻る。中小企業に勤める社員を対象とした、働き方改革の各種取り組みに対する勤務先企業の姿勢に関する調査では、勤務先企業が積極的だと思う取り組みの1位は「時間外労働の上限設定」だった。中小企業は資金的な余力も乏しく、人員、取引関係などから長時間労働に対し、自社だけで取り組むのに限界があるという見方もある。また、中小企業は大企業より労働時間が売上や賃金に直結しやすい。そのような実態を正確に把握することが、実のある政策実現への近道ではないだろうか。

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