消費増税で約6割が「景気は悪くなる」、半数が軽減税率は「影響はない」。東京商工リサーチ調査より

東京商工リサーチは2018年9月、全国の企業を対象に「消費税増税に関するアンケート調査」を実施した。ここでは10月に公表された結果のサマリーを紹介する。なお、本調査は2018年9月14日~30日にインターネットアンケートによって行われ、有効回答8,298社を集計している。

最初の設問は『増税の時期(2019年10月)についてお答えください』。この問いに対して「予定通り実施すべき」と答えたのは全企業の47.0%であった。一方の「時期を延期して実施すべき」(21.3%)、「増税を中止すべき」(28.2%)を合わせると49.5%であることから、消費税増税の延期、または中止を求める声がわずかに上回った。

【全企業8,298社】
・予定通り実施すべき……47.0%
・時期を延期して実施すべき……21.3%
・増税を中止すべき……28.2%
・その他……3.5%

この結果を企業規模別に見た結果が下記となる。「予定通り実施すべき」と考える企業が、資本金1億円以上(ここでは大企業とする)は52.5%、資本金1億円未満(同じく中小企業)は45.9%となり、大企業が6.6ポイント上回った。

【大企業(資本金1億円以上)1,434社】
・予定通り実施すべき……52.5%
・時期を延期して実施すべき……20.2%
・増税を中止すべき……24.0%
・その他……3.3%

【中小企業(資本金1億円未満)6,864社】
・予定通り実施すべき……45.9%
・時期を延期して実施すべき……21.5%
・増税を中止すべき……29.0%
・その他……3.5%

多くの企業で気になるのが消費増税後の景気動向だろう。『消費税増税で景気はどうなると予想されますか』と訊いたところ、「景気は悪くなる」が57.8% で6割弱を占めた。「景気は良くなる」と考える企業はわずか1.7%しかなく、消費増税の実施は必要だと感じていながらも、景気についてプラスにならないと考えていることが分かった。

【全企業8,298社】
・景気は悪くなる……57.8%
・景気は現状維持……37.2%
・景気は良くなる……1.7%
・その他……3.3%

規模別(結果は下記参照)で見ると、「景気は悪くなる」が大企業で52.4%、中小企業では58.9%といずれも半数を超えた。中小企業ほど悲観的な声が多い傾向であった。これまでの消費増税では、駆け込み需要で導入後は消費の下振れが起きた。このことから、今回も景気に力強さは乏しく、中小企業の約6割が厳しい捉え方をしているようだ。

【大企業(資本金1億円以上)1,434社】
・景気は悪くなる……52.4%
・景気は現状維持……41.6%
・景気は良くなる……2.2%
・その他……3.8%

【中小企業(資本金1億円未満)6,864社】
・景気は悪くなる…58.9%
・景気は現状維持…36.3%
・景気は良くなる…1.6%
・その他……3.2%

消費増税に際して、一部の飲食料品等において軽減税率が導入されることが決定した。その影響について『軽減税率はどう影響すると思いますか』と質問している。全企業のうち、「影響はない」としたのが55.9%で半数を超えた。「マイナスの影響がある」は17.4%、「プラスの影響がある」はわずか4.2%であった。

【全企業7,751社】
・影響はない……55.9%
・マイナスの影響がある……17.4%
・プラスの影響がある……4.2%
・どちらとも言えない、分からない……22.5%


この質問も企業規模別に結果を見ている。結果は下記の通りで、規模別による差異があまり見られなかった。調査ではさらに業種別に見ており、無回答を含む11業種のうち「マイナスの影響がある」と答えた比率が26.3%と高かったのは小売業であった。小売業は駆け込み需要の反動や、軽減税率による内食・外食の区分けの煩雑さなど、他の業種より多くの課題を懸念しているようだ。

【大企業(資本金1億円以上)1,313社】
・影響はない……55.8%
・マイナスの影響がある……16.2%
・プラスの影響がある……4.4%
・どちらとも言えない、分からない……23.5%

【中小企業(資本金1億円未満)6,438社】
・影響はない……55.9%
・マイナスの影響がある……17.6%
・プラスの影響がある……4.2%
・どちらとも言えない、分からない……22.3%

最後に『今回の消費税増税(8%から10%へ)の商品・サービスへの価格転嫁を行う予定ですか』との問いに対する結果を紹介したい。今回の消費増税の商品・サービスへの価格転嫁については、「増税分すべてを販売価格に転嫁する予定」が54.3%で約半数を占めたものの、「転嫁しない予定」も13.9%にのぼった。

【全企業7,611社】
・増税分すべてを販売価格に転嫁する予定……54.3%
・増税分の一部を販売価格に転嫁する予定……13.9%
・転嫁しない予定……13.9%
・分からない、転嫁する必要がない……16.4%


企業規模別に見ると「増税分すべてを販売価格に転嫁する予定」は大企業が49.3%だったのに対し、中小企業は55.3%と6ポイント上回った。また、「転嫁しない予定」についても大企業の14.3%に対して、中小企業は13.8%と0.5ポイント少なかった。これらのことから、「消費税転嫁対策特別措置法(消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法)」が、平成25年10月の施行から5年余りが経過し、一定の効果が出ているとみられる。

【大企業(資本金1億円以上)1,257社】
・増税分すべてを販売価格に転嫁する予定……49.3%
・増税分の一部を販売価格に転嫁する予定……13.8%
・転嫁しない予定……14.3%
・分からない、転嫁する必要がない……21.3%

【中小企業(資本金1億円未満)6,336社】
・増税分すべてを販売価格に転嫁する予定……55.3%
・増税分の一部を販売価格に転嫁する予定……13.9%
・転嫁しない予定……13.8%
・分からない、転嫁する必要がない……15.4%

東京商工リサーチは、これらの結果から次のようにコメントしている。
「1989年4月の消費税3%導入時は、バブル期で倒産は減少し、約1年を経過して倒産が増加した。1997年4月の3%から5%への増税時は、金融危機時の不況下で倒産は増加し、約1年後から減少に転じた。2014年4月の5%から8%への増税時は、中小企業金融円滑化法の返済猶予が定着し、倒産は抑制され現在まで沈静化が続いている。

 消費税増税の前には駆け込み需要とその反動が話題になる。これまでの消費税の引き上げと、倒産との相関関係をみる限り、駆け込み需要がその後の反動減をある程度吸収し、増税による資金繰りへの影響は半年から1年後に現れているようだ。また、倒産は引き上げ時の景気にも左右され、必ずしも消費税増税が倒産増加に直結するとは限らない。今回の消費税増税は、倒産にどう影響するか注目される」

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