ベストセラー『ビジネスモデル全史』『戦略子育て』著者の三谷宏治氏インタビュー 第1回:ビジネスモデル視点で持続的競争優位とイノベーションを実現しよう ~『マンガビジネスモデル全史』の見どころ~


「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2014」で第1位に選ばれた名著『ビジネスモデル全史』(ディスカヴァー21、2014)。そのマンガ版、『マンガビジネスモデル全史』(PHP研究所、2018)が、2年という制作期間を経て9月12日に発刊された。今回はその著者である三谷宏治氏に、ビジネスモデルとイノベーションの関係、『マンガビジネスモデル全史』制作裏話、そして経営トップがイノベーション創出のために何をすべきか、話を聞いた。

K.I.T. 虎ノ門大学院 教授
三谷 宏治(みたに こうじ)
1964年大阪生れ、福井で育つ。東京大学 理学部物理学科卒業後、ボストン コンサルティング グループ(BCG)、アクセンチュアで19年半、経営コンサルタントとして働く。92年 INSEAD MBA修了。2003年から06年 アクセンチュア 戦略グループ統括。2006年からは特に子ども・親・教員向けの教育活動に注力。現在は大学教授、著述家、講義・講演者として全国をとびまわる。K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 教授の他、早稲田大学ビジネススクール・女子栄養大学 客員教授。放課後NPO アフタースクール・NPO法人 3keys 理事を務める。『経営戦略全史』(2013)はビジネス書2冠を獲得。永平寺ふるさと大使。3人娘の父。

「持続的競争優位」と「イノベーション」を実現するには、ビジネスモデル視点が不可欠

――2018年9月に出版された、『マンガビジネスモデル全史(創世記篇/新世紀篇)』(PHP研究所)。こちらは2014年に発売されたベストセラー『ビジネスモデル全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をマンガ化したものですね。まずはこの『マンガビジネスモデル全史』出版の経緯からお伺いしたいと思います。そもそも三谷さんはなぜビジネスモデルの本を書かれたんですか?

三谷宏治氏(以下、三谷) 『ビジネスモデル全史』を出す前年、2013年に『経営戦略全史』をディスカヴァー21から出し、ベストセラーになりました。DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューから賞もいただきました。そしたらしばらくして編集長の岩佐さんから「ビジネスモデル特集を組むので、巻頭論文を書いて」という依頼がありました。でも、即座に断りました。

――え、断ったんですか?

三谷「ビジネスモデル」という言葉が大嫌いだったからです(笑)。私はBCG、アクセンチュアと経営戦略コンサルタントを20年近くやっていましたが、仕事でビジネスモデルという言葉を使ったことは一度もありません。すごく定義が曖昧で訳のわからない言葉だったからです。でも岩佐さんが是非と言うので少し調べてみることにしました。そしたら面白い論文にぶつかりました。私と同じような疑問を持った学者さんがちゃんと調べてくれていたのです。

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やはりビジネスモデルという言葉は、定義もなく曖昧なままずっと使われていました。それが、インターネットの時代に入った1991年頃からビジネスモデルというものが定義付けされ、論文も出されるようになります。勃興したネットビジネスで、頻繁に使われるようになったからです。ネットバブルが崩壊した2001年にいったん下火となるのですが、即座に盛り返し、今また大きく盛り上がっています。ビジネスモデル論が、「これまでの経営戦略論では解決し得なかったことを解決できるのではないか」と期待されているからです。

――従来の経営戦略論が解決できなかったこととはなんですか?

三谷 経営戦略論というものには、2つの大きな弱点がありました。1つは、それが「持続的競争優位」につながらないということ。優れた経営戦略論が出て、それに則り成功した企業があったとしても、5年も保たないんです。たとえば1982年に書かれた世界的なベストセラー『エクセレント・カンパニー』(トム・ピーターズら)では、47の米国企業社が優れた企業(エクセレント・カンパニー)として挙げられていました。しかし5年後に数えてみると、その半分以上がもうエクセレントではありませんでした。吸収されたり、経営破綻したりです。さらにその10年後になると、わずか数社しかエクセレントとしては残りませんでした。どんな経営戦略論も5年保てばいい方で、持続的な競争優位につながらなかったのです。

2つ目は、「イノベーション」との相性が悪いこと。HBS(ハーバード・ビジネス・スクール)教授のマイケル・ポーターは経営戦略論の大家ですが、そのスタンスは「トレードオフ」、つまり二兎を追う者は一兎も得ずです。これは『孫子』の時代から同じこと。基本的に「戦略とは捨てることなり」なのです。飲食店だって、普通は「美味い」と「安い」は両立しません。美味しいものを提供するには良い食材が必要だからです。しかし、イノベーションとは、そんな不可能を可能にすることともいえるでしょう。両立しなかった価値の両立を図ることがイノベーションなのです。吉野家は牛丼に限ってですがそれを実現しましたよね。脂っこすぎて牛肉大国アメリカでは捨てられていた「ショートプレート(焼肉店では、特上カルビとして出される)」に目を付けてのイノベーションでした。「美味い」「安い」の両立です。これがイノベーションだとすると、それをどう生み出すのかという問いに対する答えを、従来の経営戦略論は見出せませんでした。
ビジネスモデル論はそれに答えを与えました。ビジネスモデルの視点で考えることで、「持続的競争優位」と「イノベーション」が実現できるのではないかと期待されているんです。
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たもちゃん

参考ですね。

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