コロナ禍で企業の休廃業の問題が深刻化する中、6割以上が事業継承を「経営上の問題」だと認識

帝国データバンクは2020年9月14日、「事業継承に関する企業の意識調査(2020年)」の結果を発表した。調査期間は2020年8月18~31日で、全国1万2,000社から回答を得た。これにより、企業の事業継承への考え方や計画の有無が明らかとなった。なお、事業継承に関する調査は、2017年10月以来2度目となる。

3社に2社が事業継承を経営上の問題と認識

昨今の新型コロナウイルス感染症の影響に伴い、企業の倒産や休廃業の増加が懸念され、その回避策として事業継承がこれまで以上に注目を集めている。また、中小企業の経営資源の引継ぎを後押しするため、政府が「経営資源引継ぎ補助金」を実施するなど、積極的な支援が行われている。

そこで、「経営者は事業継承についてどのように考えているか」を尋ねた。その結果、「経営上の問題のひとつ」と回答した企業が、55.2%と最多に。「経営上の最優先課題」の11.8%と合わせると、67%の企業が問題として認識していることがわかった。ただし、2017年10月の調査と比較すると、「問題」と答えている割合はそれぞれ減少している。また、「経営上の問題として認識していない」との回答は、2017年は18.2%だったのに対し、2020年は21.6%と増加していることがわかった。



新型コロナの影響を契機とする事業継承への関心の高まりは?

続いて、「新型コロナの影響による、事業継承に対する関心の変化」を尋ねた。すると、「変わらない」との回答が75%と大半を占めた。「高くなった」との回答が8.9%、「低くなった」との回答は2.3%だった。

関心が高くなったという企業からは、「経営者が高齢で、新型コロナに感染すると本人の健康の危機や、経営への打撃を与える可能性が高いため」などの声があがった。しかし、「事業継承の準備段階に入ろうと考えていたが、新型コロナの影響でそれどころではなくなった。会社の存続が当面の課題となっている」、「会社を発展させる上で後継者の種々の条件がマッチしないとともに、新型コロナの影響がある現状では事業継承する勇気が出ない」といった意見も多くあがった。



4割の企業で事業継承の計画を保持。うち半分は実行に移せずか

次に、「事業継承を進めるための計画の有無」を尋ねた。すると、「計画があり、進めている」が18.7%、「計画はあるが、まだ進めていない」は21.1%と、合わせて39.8%が「計画がある」と判明したものの、そのうち半分以上の企業では計画を実行できていないという結果に。一方、「計画はない」との回答が34.8%、「すでに事業継承を終えている」との回答が12.3%におよんだ。

事業継承における計画の有無を経営上の考え方別に見ると、事業継承を「経営上の最優先課題と認識している」企業のうち、73.5%が計画をしている。さらに、計画を実行している割合も46%と全体を大きく上回っていることがわかった。また、「経営上の問題のひとつとして認識している」企業では、50.2%が計画し、20.4%が実際に進めていることが明らかに。事業継承を最優先の問題と認識しているかが、事業継承計画の有無に大きく関わると判明した。

さらに、社長年齢別に見ると、「39歳以下」、「40代」はですでに事業継承を終えた企業は3割以上あり、計画のある企業は約2割。一方、「50代」以降は社長年齢が高くなるにつれて、事業継承の計画を有している割合や計画を進めている割合も増加する傾向があるとわかった。ただし、「80歳以上」の経営者で、計画を進めている企業は70代より減少しており、計画の有無を「分からない」と回答する企業の割合が最多であることも明らかとなった。



事業継承で苦労した・しそうなことには「後継者の育成」

次に、事業継承に関する計画に対して「計画があり、進めている」、「すでに事業継承を終えている」と回答した企業に、「事業継承を行う上で苦労したこと」を尋ねた。その結果、「後継者の育成」が48.3%と最多に。次いで、「相続税・贈与税などの税金対策」が31.7%、「自社株など資産の取扱い」が30.5%となった。また、「後継者の決定」(28.2%)や「後継者への権限の移譲」(26.4%)も高い傾向にあることが判明した。

一方、事業継承に対して「計画があり、まだ進めていない」、「計画はない」と回答した企業が想定した「苦労しそうなこと」は、「後継者の育成」が55.4%と「苦労したこと」との回答と同様で最多に。次点で「後継者の決定」が44.6%となり、後継者に関する懸念が高い傾向が明らかとなった。以降、「従業員の理解」(25.5%)、「事業の将来性や魅力の向上」(22.3%)などとなった。



M&Aに関わる可能性は二分化

最後に、「M&Aへの近い未来(今後5年以内)の関わり方」を尋ねた。すると、「買い手となる可能性がある」が21.6%、「売り手となる可能性がある」が10.5%、「買い手・売り手両者の可能性がある」が5.1%と、合計37.2%が事業継承としてM&Aに関わる可能性があると回答した。

一方で、「近い未来においてM&Aに関わる可能性はない」との回答が39.2%、「分からない」が23.6%と、M&Aに関わる可能性は二分化していることが明らかとなった。回答者からは、「M&Aを検討しているが、仲介手数料が高額であり、買い手企業側が会社バリューを不等に安く評価することがある」などといった声があがっており、課題もあることがうかがえる。




経済産業省の試算では、現状のままだと2025年までに日本企業の3分の1(127万人)の経営者が70歳以上かつ後継者未定となり、廃業が増加した場合、多くの雇用とGDPが失われるという。新型コロナの影響による休廃業のリスクも増加するなか、事業継承はこれまで以上に喫緊の課題だといえるだろう。具体策が見つからない企業や、課題を抱える企業もあるため、現状を慎重に見極めていきたい。


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